ホント? 日経新聞の記事の真相とは??
2007年11月26日

非営利法人総合研究所(NPO総研)
主席研究員 福島 達也

 

11月24日の日本経済新聞の1面トップ記事に「寄付金控除の対象拡大」「自治体が団体認定」と踊っている。

これは、公益法人(NPO法人も含む)などに寄付をする個人の「住民税」を軽減する制度を2008年度から見直すということであり、所得税のことではない。

 そして、税負担を軽減できる寄付の対象団体を、自治体が地域の実情に応じ独自に認定できるようにするとのことで、今まで住民税の寄付金優遇でも国が対象団体を決めていたものを、今後は自治体が独自に選ぶ制度を設ける方向なのだという。

 もちろん、自治体が選ぶのだから、他の自治体にちょっとでも関連していたら選定するはずはなく、一部の地域(つまり、その自治体)だけで活動する公益法人(NPO)などが寄付金控除の対象となるであろう。

その点は、広範囲に活動が及び公益法人にはつらいところだ。

 認定できる団体の範囲や控除の仕方は今後詰めるということだが、今までは、国が認定した「特定公益増進法人」や「認定NPO法人」に対して、所得税が安くなっていたが、今回は、自治体が認定する公益法人やNPO等に寄付をすると、住民税が安くなると言うものなのだ。

 現在、地方税である個人住民税の寄付金優遇の対象は、自治体、都道府県共同募金会、日本赤十字だけに限られており、その対象も2006年度の摘要実績は6,200人にとどまっている。

その一方、国税である所得税は、自治体のほかに国が認定する上記の団体など2万団体が対象で、寄附者数も15万人を超えている。

圧倒的に、所得税の控除は利用者が多いのに、住民税の控除は利用者が少ないのは、制度が悪かったからといっても過言ではないのだ。

そして、住民税負担軽減の対象となる寄付金の範囲も拡大し、現行は10万円を超す部分だけが控除の対象だが、今後は所得税の寄付優遇の適用水準でもある5千円超まで引き下げるであろう。

 ただ、ここで気をつけたいのは、政府税制調査会の答申では、所得控除の拡大ではなく税額控除を検討するとのことだったが、今回の日経の記事は、所得控除の拡大になっているところだ。
ということは、政府筋といっても、財務省あたりの情報ではなく、総務省あたりからの情報なのであろう。
つまり、確定情報ではないようなのだ。

 税額控除まで広げれば、ふるさと納税と同じ効果が期待でき、地方自治体に税金を支払う代わりに、認定された団体に支払うことになるので、かなりの効果が期待できるのだが、所得控除になると、そのあたりはちょっとあやしい・・・。まあ、日経の記事はあくまでも確定情報ではないので、どちらになるのか、大変興味がわく。

 いずれにせよ、こうした記事が出る背景は、国民の少額の寄付が増えることで、公益法人などの資金調達の裾野が広がることを期待しているのだ。日本では、欧米に比べて、税制などが障害となり、個人の寄付金額は米国の1%程度にとどまっていることは有名だが、こうした制度が浸透すれば、公益法人にもじゃんじゃん寄付金が入り、政府からの補助金を大幅に減らすことができるだろう。もちろんそれが狙いであることはいうまでもない。

寄付金というのは「地域社会の会費」と言われている。個人住民税の性格や地方分権の観点も踏まえて、地方自治体が独自に判断できるのはよいことだが、控除方式については、誰の目にも分かりやすいようにするため、「所得控除方式」ではなく「税額控除方式」と採用してほしい。

なお、政府税調の答申では、以下の5点を指摘しているので参考にして欲しい。

1)新たに創設される公益社団法人・公益財団法人については、第三者委員会の認定を受けて公益を目的とした事業を担い、公益目的事業財産という新たな概念に基づき、公益目的事業の遂行等が求められる法人であり、公益目的事業から生ずる所得の取扱いなどに関して、公益目的事業の実施をサポートする措置を講じるべきである。

2)新たに創設される一般社団法人・一般財団法人については、準則主義により設立可能であり、多様な態様のものが現れることが予想されるところである。このため、一律の取扱いとすることは適当ではなく、他の法人等に対する課税とのバランスにも留意しつつ、態様に応じた措置を講じるべきである。

3)民間が担う公益活動を資金面で支えるうえで寄附の役割は重要である。このため、特定公益増進法人の中に公益社団法人・公益財団法人を位置付けることにより、寄附を行った個人・法人が寄附金控除等を受けることができるようにするとともに、個人による現物の寄附に配慮するなど、寄附を行うための環境整備を進めるべきである。なお、個人住民税における寄附金税制のあり方については、前述した方向性も踏まえ、検討を進めるべきである。

4)新たに創設される法人が租税回避に濫用されないよう、現行の公益法人等に関する租税回避の防止措置をも考慮し、適切な措置を講じるべきである。

5)現行の社団法人・財団法人が一般社団法人・一般財団法人に移行する際に公益を目的とした事業の継続が求められる場合があり、そうしたケースをどう取り扱うかについての検討が必要である。

 いよいよ、来年度の税制改正論議が本格化してきている。先日の税制調査会の答申を受けて、次は与党税制調査会が審議を始めることとなる。

 そして、与党税制調査会が12月中旬に税制改正大綱を発表し、さらにその後、財務省が税制改正の大綱を決定する。国会成立は来年の3月だが、勝負はこの1ヶ月だ。

さあ、その内容と解説は・・・・

1月28日開催の私どものセミナーで詳しく述べたいと思う。
テレビドラマのようだが「乞うご期待!」ということで・・・・。


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